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■第12回 (院長〜2007. 12掲載) |
★インフルエンザ
今年は、10年ぶりにインフルエンザの流行が早期になりました。地球規模の温暖化の影響で、通常2月頃にピークがありますが、
2006年は2007年3月にピークがずれました。ですから、今年の秋のインフルエンザワクチン接種も、12月までに接種しましょうねと
言っていたら、なんと予想外の速さです。多くの人はインフルエンザと通常の風邪の区別はつきません。インフルエンザワクチンを打
ったあとに普通の風邪を引くと多くの人から、ワクチンを打ったのになぜ効かないのかと苦情があります。インフルエンザワクチンは、
インフルエンザウイルスしか効果ないと説明すると、何かだまされたような態度をとる患者さんは多いです。お金をかけたのに、1つ
しか効果ないなんて、後だしジャンケンみたいだとのことです。又、インフルエンザワクチンを打ったのに、インフルエンザにかかった
時は、鬼の首を取ったように苦情が出ます。効果がなかったのだから、お金は払い戻しにならないのかと言われた事もあります。
65歳以上の統計では、インフルエンザワクチン接種で、約45%感染防止効果で、80%死亡防止効果、1−6歳では、約20−30%
感染防止効果です。万能な治療法はないのですが、すぐ効果があるという宣伝文句に一般の方は弱いようです。今後、インフルエ
ンザ流行が拡大したら、年末の休日診療(私は29日午後が担当)がパンク状態になるのではないかと今からおびえている私です。
3月の休日診療では、インフルエンザ流行に当たりました。どうせ当たるなら宝くじにでも当たりたい。
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■第11回 (院長〜2007. 10掲載) |
★寿命
人をなぐさめることは、とてもむずかしいことです。新聞の投書で、子供を亡くした母親から、一番傷つくのは、悪意がないとわかっ
ていてもまた子供はできるとか、もう子供はいるのだからと言われることだと言っていました。医師となれば、患者の死と向き合う
ことも多くなります。その時に、残されたご家族にご愁傷様と言うのはもちろんですが、特に主治医として入院患者が亡くなった場合、
ご家族とも何度も会っており、お互いに悲しみを共有した意識があります。介護を尽くされた家族には、自然にもっとなぐさめられる
言葉はないかと思い、なぐさめの言葉が逆に家族の怒りを買ったことがあります。
患者さんは、85歳の男性で、その頃の男性平均寿命は、74歳でした。
医師(私):「お父様は、苦しまずに亡くなられました。ご愁傷様です。」
娘:「・・・・・・」ただ、泣くばかり。
医師:「皆さんに看取られて。十分に介護なさいましたよ。」
娘:「お世話になりました。もっと長生きしてくれると思ったのですが・・・。残念です。」
その後、今までの経過、治療内容を再度説明し、別れる間際、
娘:「もっと長生きしてくれれば・・・」
医師:とても悔いが残っているのを感じて、「男性の平均寿命は74歳ですから、お父様は長生きしたと思いますよ。」
娘:目を吊り上げて、「父の家系は、皆90歳以上生きるんです。」
身内にとっては、世間の男性平均寿命を越えたから良いというわけにはいかないのです。
家族は精一杯のことをしましたよと言うつもりで、なぐさめるつもりが、相手を傷つけていました。
ひたすら、言葉は難しいと感じたものです。
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■第10回 (院長〜2007. 8掲載) |
★職業病
診察の最後に、患者さんに「お大事に。」と挨拶をします。通常のさよならの感覚です。それが、口癖になったのか、先日友人とわか
れる時に、「バイバイ」と言うつもりが、なんと「お大事に。」と言ってしまいました。友人も最初、キョトンとしていましたが、二人とも医師
なので、すぐに私が挨拶を間違えたとわかり大笑いされました。最近にも、事務さんにお疲れ様と言う代わりに、「お大事に。」と言って
しまいました。職業病です。医師なりたての頃は、静脈注射が下手ですから、電車の中のつり革をつかんでいる人の手に見入ってし
まいました。この手なら、注射しやすそうだなとか、難しい血管だなとじろじろと見ていたものです。職業病です。今でも、街中で、人の
顔色や歩行などで、この人は○○病ね、あの人は、△△病と、一人で診断してしまいます。職業病です。診療所内でも、患者以外の
人(付き添いや掃除関係者など)の診断もしてしまいます。お節介です。医師同士の会話では、食事中でも、通常の人が食欲をなくす
様な会話が全く違和感なく交わされ、おいしく食事できます。職業病です。ある日、姉と会話をしていたとき、急に姉が、『あなたの話は
年寄り染みている。内科はお年寄りが多いから、うつったんじゃない。』と言われました。会話の内容も忘れてしまいましたが、ショッ
クだけは尾を引いています。6歳年上の姉に年寄りとは言われたくないと思います。
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■第9回 (院長〜2007. 6掲載) |
★水分摂取について
いまから、約15年前の話です。まだ病院勤務で入院患者を担当していた頃です。患者は60歳代の女性で、自己免疫性肝炎、
糖尿病でした。入院中に、患者に異変が起こりました。低カリウムが生じたのです。カリウムは主に細胞内に存在する陽イオンで、
細胞の機能、特に神経、筋肉の機能に重要な役割を果たしています。原因精査しましたが、原因不明で、不整脈まで生じてしまい
ました。点滴で最大量のカリウムを入れてもカリウムは減るばかりで、死亡の危険も生じ、転院も考える状態となりました。ある
日重い気分で患者の病室に入った所、ミネラルウォーターの箱が積み上げられていました。これは何と患者に尋ねたところ、最近
テレビで水が体にいいと言っていたから、毎日4リットルぐらい飲んでいる。今回、まとめて購入したと言うのです。そうです、
低カリウム血症の原因は、過剰な水分摂取でした。患者はそんなことは、理解していませんでしたから、テレビの健康番組で体に
良いと言えば実行します。又、水を飲むことは特別なことではありませんから、看護婦にも医師にも報告していなかったのです。
入院中は、外から食事を持ってくることはできませんし、まして患者は食餌療法中で病院食以外の摂取禁止は理解していましたが、
まさか水がいけないなんて考えてもいませんでした。病室内で、「これだ、これだ。」と小躍りしている私の姿は、異様だったと
看護婦に言われました。すぐに水分制限し、低カリウム血症は治りました。今も通院しているこの患者とは、よくテレビでの健康
番組の話になり、前回の『納豆ダイエット』も話題にしました。私の水の話も載せてほしいと患者さんから要望があり、今回載せ
させてもらいました。最後に、テレビでの健康番組の話は健康な人向けですから、注意しましょう。
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■第8回 (院長〜2007. 4掲載) |
★納豆ダイエット
やっていただきましたね。『あるある大辞典』今年始め、糖尿病患者が悪化し、食事内容をチェックしたところ、納豆ダイエットを
していました。その時はまだ偽装は判明されていませんでした。納豆を1日2回摂取してやせることはないし、1パック約85Kcalで、
1日170Kcal多く摂取していることになります。もちろん大豆製品は体に良く、高蛋白、低脂肪、納豆キナーゼによる血栓防止作用
があります。摂取するなら、1日1パック夕食に取っていただきたいです。しかし、糖尿病や、慢性腎不全などで、食事制限特に蛋白
質制限している人は要注意です。体重1kg減量に必要なエネルギーは7000〜8000Kcalと言われています。ですから、納豆ダイエット
では、2ヶ月継続で、確実に1kg体重が増える計算になります。患者に説明しても、納得したように思われませんでしたが、すぐに中止
させました。その後、偽装が判明されました。今まで何度もテレビの健康番組の為に、患者に悪影響が出たことでしょう。一度などは、
患者の生命まで危ないことがありました。(このことは、次回にでもお話しましょう。)これを食べればやせるという食品はありません。
カロリーのない食品以外、余計に食べて太らないものはありません。食べてやせるものが本当にあれば、この世に肥満はなくなります。
だまされないでください。知っていても、ついついやってしまうのは、承知していますけど。(私だって、何かしらやったことがあるので。
もちろん効果なしでした。)
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■第7回 (院長〜2007. 2掲載) |
★マザーグースの童話
『先生のご両親は、娘が医者で幸せですね。病気も早く判って、面倒も見てくれて。』と言う患者さんは多いです。そんな時、私は
「マザーグースの歌」を歌います。「靴屋の女房は裸足で歩き、医者の女房は早死にする。」その通りです。身内はあまり診察でき
ません。特に親にとっては、子供は幾つになっても子供です。医師である私の言うことなど聞く耳持ちません。時々、患者さんの身
内から、「うちの主人はわがままで、いつも先生にご迷惑をかけて申し訳ありません。」などと言われるとき、私はすかさず、「いいえ、
当クリニックで一番わがままな患者は、私の父です。うちの父と比べれば、お宅のご主人は全然わがままではありませんから、心配
いりません。」と返事をします。1日60本のタバコを40年以上、アルコールも大好きな父は、立派な糖尿病、高血圧、肺気腫です。20年
前に手術後に禁煙しましたが、それ以前に何回禁煙させさせたことか。手術前にも、禁煙しないと手術に差し支えると何度説明しても、
『お前は、内科医で何もわかっていない。』と答えていました。しかし、手術前にやはり肺からの感染症のため、手術は延期となりました。
やっと手術できても、肺のゆ着が強く大手術となり、担当医師より禁煙しなければ長生きできませんと言われてから、現在までなんと
20年も禁煙できています。娘があれほど言っても禁煙できなかったのに。全く、親は言うことを聞きません。イヤダイヤダ。ぶつぶつ。
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